ごあいさつ

Nakai
理事長 中井 裕

平成 16 年(2004 年)4 月より理事長を務めております新潟食料農業大学の中井裕です。故扇元敬司先生が研究会発足以来 10 年半にわたって理事長を務められ、私はその後を引き継いで今に至っております。
私は、研究会設立準備から係わってきましたので、これまでの31年の歴史を振り返ることにします。

本学会の前身は日本畜産環境研究会で、その設立趣意書は準備世話人会によって平成 5 年(1993 年)3 月 1 日に提案され、研究会の会則は 9 月 7 日に、編集規定は同年 11 月 1 日に制定されています。研究会の設立日は会則制定の 9 月 7 日としております。
当時は、畜産業が社会に認められる形で生き残るためには、畜産環境問題の克服が必須であり、畜産に求められるもっとも大きな命題は地球環境との調和で、その命題を科学的に解決することを目的に研究会が作られました。研究会は、畜産環境問題の認識、畜産環境保全に関する研究の基礎的および応用面の理解、畜産環境研究者の交流や他分野からの研究者の参入などに広く貢献しました。

研究会として多くの皆さんと共に 8 年間活発に活動しましたが、畜産による環境汚染はなおも深刻な問題として存在しており、方策の立案やアイデアの発掘にはさらなる研究の推進が不可欠で、根本的な問題解決には科学的な掘り下げが必要で、畜産環境問題の解決には分野を越えた研究成果の結集が求められておりました。そのような状況への反省と、将来の展望にもとづいて、畜産環境に関わる多方面の研究の推進母体となる組織として、平成 13 年(2001 年)6 月 5 日、研究会は日本畜産環境学会に改組されました。学会会則、編集規定も同日に制定されています。組織改組を受けて、設立記念大会と銘打たれた第1回大会は翌平成 14 年(2002 年)7 月 29 日に開催され、学会としての本格的な活動が開始されました。

学会改組の趣旨は、畜産環境問題の解決のために、地球環境、地域環境および生産環境を総合的に捉えた上に、基礎的な研究と現場に密着した研究とを融合させた新しい研究分野としての「畜産環境学」の確立を目指し、畜産環境学の諸課題の研究推進と、その成果の現場へのフィードバックを目標とした活動を行うことでした。この時の畜産環境学の具体的な研究対象は、家畜・畜産による環境問題、家畜排泄物の処理・利用、動物福祉などでした。

31 年間の活動の中では様々のことがありました。京都議定書採択(平成 9 年(1997 年))、家畜排せつ物法制定(平成 11 年(1999 年))、暫定排水基準の定期的な見直しでは学会活動の機運が高まりましたが、東日本大震災や新型コロナウイルス感染症では学会自体の存続が危ぶまれる状況に陥りました。しかし、会員や理事の皆様の努力でなんとか乗り越えてきました。

令和6年(2024 年)8 月 30 日、本学会は日本学術会議協力学術研究団体に指定されました。本学会の長年にわたる活動や成果が評価されたものであり、心より嬉しく思っております。

これを機に、本会の活動をさらに活性化させると共に、学会誌をなお一層充実させる所存です。

皆様のご支援、ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

令和 6 年(2024 年)9 月 10 日
日本畜産環境学会 理事長
中井 裕

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