投稿論文 Vol.12–14

固形硫黄を用いた畜舎排水の硝酸性窒素等の低減技術

長谷川輝明1・田中康男2
1)千葉県畜産総合研究センター, 千葉県八街市, 289-1113
2)国立研究開発法人農研機構畜産草地研究所, 茨城県つくば市, 305-0901

要約
粉末状または粗砕状の固形硫黄を充填した水槽に硝酸性および亜硝酸性窒素を含む液を流入させると硫黄酸化脱窒細菌が増殖し、硝酸性および亜硝酸性窒素を窒素ガス化して除去できる。この脱窒法を簡易かつ低コストで実施する手法を検討した。結果として、処理槽には土木用のノッチタンクを利用し、タンク内の土砂沈殿用部位に硫黄を充填し、硝酸性および亜硝酸性窒素含有液を自然流下させるのが実用的であった。粗砕硫黄は水中で自然沈降するが、粉末硫黄は撥水性のため水面に浮上してしまう。このため、粉末硫黄を使用する場合には投入時に家庭用中性洗剤を添加し親水化処理を行う。この親水化効果は持続するので中性洗剤の使用は投入当初のみでよい。脱窒反応による硫酸イオン生成で処理水pHが放流基準値以下になる場合、また脱窒反応に必要な炭酸が不足する場合には、飽和重曹溶液の添加が効果的である。重曹は仮に過剰添加になった場合も処理水のpHが8.6を上回ることがないため利用し易い。処理水の一部は、硫黄と液の接触促進と加温を目的に、ポンプで常時原水流入区画に返送し循環させた。この循環ラインの一部は、長さ10m程度の水道用ステンレス製フレキシブル管とし、既存浄化処理施設の曝気槽内にコイル状に巻いて浸漬させる。この循環ラインにより曝気槽混合液の熱を処理槽に移送することで冬期でも一定の水温維持が可能となる。さらに、太陽熱加温システムを設置すれば晴天時の水温上昇が期待できる。

キーワード: 固形硫黄、硫黄酸化脱窒細菌、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、低コスト手法

受領.: 17.04.2015. 受理: 19.05.2015.
日本畜産環境学会 No14 (1) pp56-66. 2015
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簡易加温システムを備えた土砂沈殿分離タンク転用リアクターによる養豚排水用硫黄脱窒処理技術の開発

長谷川輝明1・田中康男2
1)千葉県畜産総合研究センター, 千葉県八街市, 289-1113
2)国立研究開発法人農研機構畜産草地研究所, 茨城県つくば市, 305-0901

要約
土木工事用土砂沈殿分離タンクを転用したリアクターと粉末硫黄を利用した脱窒技術の実用化に向けた試験を行った。タンクは水有効容積500Lで、仕切板により上下迂流方式で流下する。このタンクを2槽連結したリアクターに、中性洗剤で親水化処理した粉末硫黄を200kg充填して、養豚汚水の浄化処理水(硝酸性窒素濃度約160mg/L)を原水として通水した。また、脱窒反応に伴う処理水の酸性化を防ぐために飽和重曹溶液を適宜添加した。冬期にも実用的な脱窒能力を発揮させるため、リアクターの加温対策の試みも行った。加温法として、実験区1では水中ポンプを循環ポンプとしてリアクター内に設置し、液を循環させることでポンプ稼働熱による加温を図った。実験区2では、その循環ラインの一部をステンレスフレキシブル管とし、既存浄化処理施設の曝気槽に浸漬することで曝気槽混合液の熱をリアクターの加温に利用するシステムとした。実験区1(窒素負荷0.26~2.0kg-N/ton-S・日)の水温は7~13℃で外気温と比較して顕著な温度上昇は見られず、窒素除去率は平均29%と低かった。実験区2(窒素負荷0.51~0.95kg-N/ton-S・日)ではリアクター内水温が13.5~17.7℃で外気温よりも1.7~9.5℃高まり、平均除去率も66.5%にまで高まった。以上から、簡易加温システムを備えた土砂沈殿分離タンクと粉末硫黄を利用した処理システムにより、通年で脱窒を行える可能性が示唆された。

キーワード: 養豚排水、脱窒技術、硫黄酸化脱窒細菌、硫酸イオン、バッフルド型リアクター

受領.: 17.04.2015. 受理: 22.05.2015.
日本畜産環境学会 No14 (1) pp47-55. 2015
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米ぬかを添加したカンショ茎葉サイレージを摂取した肥育豚ふん尿からのアンモニアガス揮散濃度

祐森誠司、塩田祐馬、太田裕司、池田周平
東京農業大学農学部, 神奈川県厚木市, 243-0034

要約
飼料自給率の向上とふん尿混合物由来のアンモニアガス揮散量の低減を目指して米ぬか添加カンショ茎葉サイレージを調製した。LWD去勢豚8頭を2連単飼の代謝ケージに1頭ずつ収容した。予備飼育では市販配合飼料を給与し、試験開始から試験区には乾物換算5%相当の米ぬか添加カンショ茎葉サイレージを添加した飼料を給与した。ふん尿の採取は試験開始から約1カ月の時点で行ない、採取後ただちにアンモニア揮散テストを実施した。ふんと尿を10gずつ混合してポリエチレン袋に入れ、一度脱気を行い、6Lの空気を注入した。その後、北川式ガス検知管で測定、これを0時間とし、室温30±2℃に調整した調温室で6時間ごとに24時間まで計測した。ふんと尿のpHと全窒素を測定し、尿は尿素濃度をふんは有機酸組成を測定した。アンモニアガス揮散濃度は、測定開始12時間以降で試験区が有意(P<0.05)に低い値を示した。ふんの全窒素量に有意差はなく、尿の全窒素量および尿素濃度は、試験区が有意(P<0.05)に低い値を示した。ふんと尿のpHに有意差はなかった。ふんの有機酸組成にも区間に有意差はなかった。以上から、米ぬか添加カンショ茎葉サイレージの給与による腸管内微生物叢に大きな変化はなく、米ぬかの添加によるアミノ酸バランスの補正が、生体内の窒素代謝を改善し、尿中尿素濃度が低下したことによりふん尿混合物のアンモニア揮散量が低下したと考えられた。

キーワード: カンショ茎葉、アンモニアガス揮散、尿素、去勢豚

受領.: 28.04.2015. 受理: 18.05.2015.
日本畜産環境学会 No14 (1) pp40-46. 2015
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稲わら、エリアンサス茎葉の CaCCO 法前処理・酵素糖化プロセスから発生するカルシウム含有残渣の灰化物による畜産排水水質の改善

田中康男1、趙 鋭2、池 正和2、榊原祥清2、進藤久美子2、我有 満3、徳安 健2
1)農研機構畜産草地研究所 茨城県つくば市池の台305-0901
2)農研機構食品総合研究所 茨城県つくば市観音台305-8642
3)農研機構九州沖縄農業研究センター 熊本県合志市須屋861-1192

要約
稲わら、エリアンサス茎葉等のセルロース系バイオマスからエタノール製􏰀用糖液 を調製するプロセスの一つとして、消石灰を用いる CaCCO(炭酸ガス吹き付けによるカルシウム捕捉)法前処理・酵素糖化プロセスが開発されている。このプロセスによる糖液生産後には、 有機物、カルシウム、ケイ素を多く含む残渣が発生する。この残渣物を加熱処理した資材による畜舎排水の高度処理の検討を行った。この結果、残渣を 500~600°Cで加熱した後に、0.05W/V% 程度で畜舎排水に添加するとPO43−‐Pが50~70%除去され、色度の指標である390nm吸光度も約10%低減することが確認された。また、この程度の添加率であれば、排水のpHは規制値の 8.6 を超えることはなかった。以上より、リン酸の低減と回収を主目的とした排水の高度処理に 有効利用可能であることが示唆された。

キーワード: CaCCO法、カルシウム、 色度、リン酸、養豚排水処理

受領.: 22.12.2014. 受理: 23.02.2015.
日本畜産環境学会 No14 (1) pp33-39. 2015
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好気性超高温発酵堆肥の抗大腸菌群効果の検討

小堤悠平1、長峰孝文1、高橋友継1、畠中哲哉1、道宗直昭1、眞鍋昇2 
1)(一財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所、福島県西白河郡西郷村 961-8061
2)東京大学大学院農学生命科学研究科 高等動物教育研究センター・附属牧場、茨城県西茨城郡岩間町 319-0206

要約
好気性超高温発酵堆肥による殺菌効果を検討した。東京大学附属牧場の圧送通気式堆肥化施設で発酵処理した好気性超高温発酵堆肥を実験に供試した。三つの試験からなり、①超高熱発酵菌堆肥に乳牛ふんを混合し、ポット培養後、大腸菌群数による抗菌作用の試験、②超高熱発酵菌堆肥を実際の牛舎敷料に利用し、大腸菌群数による抗菌作用の試験、③好気性超高温発酵堆肥の乳房炎原因菌(4菌株)に対する抗菌作用の試験を行った。供試した堆肥の発酵温度は、年間を通じて切り返し時には100℃以上に達した。試験①の結果、50日目に堆肥の濃度依存的に大腸菌群の増殖が抑制される傾向が見られた。試験②の結果、堆肥の牛舎敷料利用は、オガクズのみの敷料にくらべて大腸菌群数を抑制した。試験③の結果、供試4菌株に対しては明確な抗菌効果は認められなかった。これらの結果より、長期的な敷料利用で大腸菌群を制御できる可能性があるが、好気性超高温発酵堆肥の敷料利用時の抗菌性は限定的であることが示唆された。

キーワード: 超高熱発酵菌堆肥、牛舎敷料、大腸菌群数、乳房炎
受領.: 17.09.2014. 受理: 06.11.2014
日本畜産環境学会
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モルタルミキサーを利用した牛ふん堆肥の造粒技術の検討

長谷川輝明、杉本清美、細谷肇
千葉県畜産総合研究センター、千葉県八街市289-1113

要約
原料の2mm以下に篩分けした10kgの牛ふん堆肥とバインダー溶液(市販リグニン材と水の混合物)とをモルタルミキサーに投入して撹拌し、造粒状態を検討した。なお、比較基準は堆肥乾物重量に対する市販のリグニン材量(1.5~4.5%)、水使用量(25~50%)ならびに撹拌時間(60~180分)とした。その結果、水添加率が高いと造粒堆肥の粒度は大きくなる傾向にあった。また、造粒することで原料堆肥を40~50%にまで減容できた。風乾後の造粒堆肥の強度は0.40~0.65kg/cm2であり、ブロードキャスタを用いた機械散布では約80%が散布基点の両側2m以内に分布し、崩壊割合は約4%だった。

キーワード: モルタルミキサー, 造粒技術, 造粒堆肥,牛ふん堆肥
受領.: 17.01.2014.受理: 07.02.2014.
日本畜産環境学会
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Effect of green tea catechin supplementation in diets for pigs on ammonia emissions from urine and feces mixture

Miki Mino, Shuhei Ikeda, and Seizi Sukemori
Graduate School of Tokyo University of Agriculture, Funako 1737, Atsugi-shi, Kanagawa Prefecture, 243-0034, Japan

Abstract
The present study aimed to investigate the effects of green tea catechin supplementation to the feed of fattening pigs on the nitrogen level of urine, fecal ammonia emission, and microbial flora.Two diets were used: a control (no green tea catechin added) and a 0.4% green tea catechin-added feed.Eight crossbreed (Meishan_Duloc_Berksher) growing pigs were used in this study.During the growing and fattening periods, feces and urine were collected from each pig to prepare the mixture at a ratio of 1:1 in weight of feces and urine, was placed in a polyethylene sample bag modified with a rubber tube.Each bag was sealed after vacuum suction and inflated with 6 liters of air.The bag was kept at 30±2C for 0,6,12,18, and 24 hrs and triplications were prepared for each time.Ammonia gas concentration was determined with Kitagawa precision gas detector tubes.The pH, total nitrogen, and urea concentration in urine and microbial flora in feces were also determined.There was no significant difference in the chemical analysis and microbial flora; however, total nitrogen and urea concentration in urine decreased in the experimental group.Ammonia gas emission in the experimental group was significantly (P <0.01 and/or 0.05) reduced in comparison with that in the control group, in regardless of the growth stage.Catechin may have accelerated the utilization of endogenous nitrogen, and reduced the concentration of urea in the urine resulting reduction of ammonia emission from the mixture of feces and urine.

Key words: green tea catechin, ammonia emission, pig

Receipt of Ms.: 15.10.2013.Accepted: 25.11.2013.
Animal Production Evironment Society Japan
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Reduction of ammonia gas emission by preliminary washing of bedding straw

Miki Mino, Shuhei Ikeda, and Seizi Sukemori
Graduate School of Tokyo University of Agriculture, Funako 1737, Atsugi-shi, Kanagawa Prefecture, 243-0034, Japan

Abstract
 Effects of preliminary washing of straw on ammonia gas emission after using it for bedding were evaluated.Rice straw cut into 10cm was washed with tap water (experimental group 1), with hot water at 70C(experimental group 2) and not washed (control group).Straw was mixed with cow urine at a 1:1 ratio, and they were placed in polyethylene sample bags.Each bag was inflated with 4 liters of air.They were kept at 25±2C for 48 hrs.Ammonia gas concentration was determined with Kitagawa precision gas detector tubes every 12 hrs.Ammonia gas emission in the preliminary washing groups was significantly lower than that from the control group.

Key words: ammonia gas emission, bedding straw, preliminary washing

Receipt of Ms.: 29.11.2012.Accepted: 18.01.2013.
Animal Production Environment Society Japan. No12(1):pp20-23. 2013
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