屑米と陳皮を利用した自家配合飼料給与による採卵成績
押尾優汰1・石田 和2・渡邉貴之2・青山東一2・祐森誠司1
1 静岡県立農林環境専門職大学 産環境経営学部、磐田市富丘678−1 〒438-8577
2 静岡県立農林環境専門職大学 短期大学部、磐田市富丘678−1 〒438-8577
要約
飼料自給率の向上を目指して屑米と陳皮を主材料とする自家配合飼料での採卵養鶏への影響を検討した。31 羽の採卵鶏を無作為に 2 区(16:15)に分けた。鶏舎は開放型平飼いとした。対照区は市販飼料、試験区は自家配合飼料を給与した。飼料摂取量、産卵数、卵重および飼料効率の飼育成績と卵黄色及び卵黄中の β-クリプトキサンチン量ならびに血清成分を比較した。飼料摂取量は試験区で低くなる傾向にあった(P=0.02)。産卵率は試験区が有意に低かった(P<0.01)。卵重に有意差は認められなかった(P=0.11)。飼料効率は試験区が有意に低かった(P<0.01)。卵黄色は試験区で有意に低くなったが(P<0.01)、β-クリプトキサンチン量は試験区で約 1.5 倍高かった。血清中のアルブミンと総タンパク質並びにカルシウムの値は試験区が有意に低かった(P<0.01)。いずれの成績も飼料中の CP とエネルギー含量が試験区で低すぎたことが影響したと考えられた。
キーワード: 屑米、陳皮、産卵成績、β -クリプトキサンチン
カウシェード用パイプラインミルカーを備えた牛舎から生じる搾乳関連排水の低コスト管理手法の検討
猫本健司1・大倉達也1・尾崎佑磨1・河合紗織2
1 酪農学園大学 農食環境学群、北海道江別市 〒069-8501
2 青森県産業技術センター 畜産研究所、青森県上北郡野辺地町 〒039-3156
要約
本研究では、カウシェード用パイプラインミルカーを備えた既設のつなぎ飼い牛舎から排出される搾乳関連排水を対象とし、高価な浄化処理施設を用いない、低コスト管理に向けた対応方法を検討した。対象酪農場 2 軒(A, B)は、ミルクパイプの平均傾斜が適切な角度(0.5°)以上であるにも関わらず、含まれる生乳が標準的な濃度(0.3%)より著しく高いため、搾乳関連排水に関して問題を抱えていた。現地調査や水質分析を実施し、簡易な浄化施設(例えば越流式沈殿槽)を用いても排水基準を満たすことは困難であるため、原水の汚濁度合を下げる(同排水に混じる生乳を少なくする)対応を実施した。一つは、尿ための貯留可能日数に余裕がある A 酪農場の場合であり、搾乳関連排水の汚濁度合を高める原因である「前すすぎ排水」(搾乳終了後の循環洗浄で最初に排出される白濁した排水)を搾乳関連排水に混ぜずに、電動バルブなどを用いて尿ために導き、尿液とともに圃場還元する対応を検討した。尿ための貯留日数に余裕がない B 酪農場の場合には、酪農家にとって日々の手間と時間を要するが、搾乳が終了しても、5~10 分程度は真空ポンプ等の運転を続けることによる、エアー回収によりミルクパイプ内の残乳回収を実施し、残乳が搾乳関連排水に混ざらないようにした。結果として、搾乳関連排水の汚濁度合はいずれの酪農場においても低下し、排水路はきれいになった。したがって、高価な浄化処理施設を導入しなくても、本研究で提案した搾乳関連排水の汚濁度合を低減させる対応は、同排水を適切に管理する一手法になることが明らかになった。
キーワード: 搾乳関連排水、前すすぎ排水、残乳、尿ため、酪農場
遠心分離により血沈が生じた乳牛個体乳の血液濃度と牛群成績の関連性について
猫本健司1・安田楓花1・土屋怜1・菅原崇2・四宮紀之2・田村知久2
1 酪農学園大学 農食環境学群、北海道江別市 〒069-8501
2 とかち財団、北海道帯広市 〒351-0012
要約
酪農現場では乳房内出血が原因と推定されるピンク色を呈する生乳(以下、血乳と呼称する)が搾乳されることがある。血液混入の検査は目視(色沢)の他、乳業会社によってはバルク乳の遠心分離により血液沈殿(以下、血沈と呼称する)の有無を判定する精密検査を実施している。しかし、いずれの方法も血液混入の有無しか判断できず定量できないことから、筆者らは「とかち財団」が開発中の簡易型血液混入検査装置を用いて、現場で生じた血乳中の血液濃度を定量し、症状の推移や体細胞数などの牛群成績との関係を検討してきた。本研究では、個体乳を対象に遠心分離による血沈発生の有無と、血液混入量や牛群成績との関係について報告する。1酪農場(経産牛70~80頭)において、2年間に目視で確認された血乳は2個体であり、目視で確認できる限界濃度(0.01%)を上回る明らかな血乳が確認された。一方、同酪農場にて牛群検定の際に採取した個体乳(2020年9月の70個体乳と2021年9月の64個体乳)において、遠心分離により血沈が生じたのはそれぞれ6および5個体乳であり、血沈の発生割合は8.2%、血液濃度は 0.0004~0.0060%の範囲であった。血沈検出と非検出個体における血液濃度の平均はそれぞれ0.0022±0.0015, 0.0011±0.0008%となり、5%水準で有意な差が認められた。しかしながら、血沈が生じた個体乳11検体のうち2検体の血液濃度は非検出個体乳の平均値(0.0011%)よりも低く、さらに、血沈非検出個体乳123検体のうち7検体は、検出個体乳の平均値(0.0022%)を上回り、溶血などの原因により血沈が生じていない可能性が示唆された。したがって、遠心分離による血乳検査は目視よりも検出精度が高いものの、不確実な方法であることが示唆される。このことから、本研究で用いた簡易型血液混入検査装置で血液濃度を定量できる意義は極めて高いと考えられた。
キーワード: 血乳、血液濃度、血沈、体細胞数、酪農場
扁平ノズル型モニタリング装置を用いた養豚汚水処理施設における活性汚泥物質濃度の自動測定
田中康男1・中野貞雄2
1 一般財団法人畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所、福島県西白河郡 〒961-8061
2 中野企画、埼玉県朝霞市 〒351-0012
要約
活性汚泥法の養豚汚水浄化施設では曝気槽の活性汚泥浮遊物質(MLSS)濃度の調整が重要である。しかし、管理者による適正調整は困難なのが実情である。この状況改善のため、MLSS 濃度をモニタし、汚泥引抜ポンプを自動制御するシステムが開発され、その中核となる MLSS モニタが提案されている。このモニタでは、曝気液を円筒ノズルから自由落下させ、落下水柱の左右に透過型光電センサの照射および受光ヘッドを配置し、透過光量の減衰率を計測する。しかし、このモニタ方式では落下水柱の断面が円形のため透過光通過時の屈折が不可避であった。このため、MLSS と透過光量の関係が複雑になり、単一式では近似できないという問題点があった。これを改善するため、ノズル断面を長方形にすることで落下流水を帯状化し、レンズ効果が発現しないようにした。この結果、MLSS 濃度約 1,000~10,000 mg/Lにおいて、光量と MLSS 濃度との関係が単一の累乗関数で表せるようになった。さらに、発光強度を低下させセンサヘッド間の距離を広げることで、約 50~1,000 mg/Lの低濃度域でも2次関数で近似できた。よって処理水 SS 濃度が排水基準以下であることの確認用としても利用可能性がある。
キーワード: 養豚汚水、活性汚泥法、MLSS濃度、モニタリング装置、扁平ノズル
屑米を利用した採卵鶏飼料への陳皮添加が卵黄色に及ぼす影響
熊﨑ひかり1・白石菜未1・斉藤美優2・青山東一2・祐森誠司1
1 静岡県立農林環境専門職大学 生産環境経営学部、静岡県磐田市 〒438-8577
2 静岡県立農林環境専門職大学 短期大学部、静岡県磐田市 〒438-8577
要約
屑米を利用した採卵鶏飼料による卵黄色退色を予防するために陳皮を飼料配合することが生産性および卵黄の退色抑制に対する影響を検討した。供試鶏は生後 109 日齢のボリスブラウン 30 羽を用い、無作為に 15 羽の 2 群(対照区、試験区)に分けた。いずれの群においても飼育密度が 15 羽/5 m2 の開放式平飼い鶏舎で飼育した。照明は試験開始からの 10 週間は自然採光とし、試験終了前の 3 週間は 12 時間の蛍光照明とした。対照区は市販飼料、試験区は市販飼料 50%と屑米、陳皮、魚粉および牡蠣殻(計 50%)を給与した。測定項目は毎日の飼料摂取量、産卵数、卵重および期間を通じた飼料効率ならびに全農カラーチャートを用いた卵黄色の比較を毎週1回行った。また、飼料価格も試算した。結果として屑米を給与しても陳皮の利用で卵黄色の退色はある程度抑制され、黄色を呈していた。平均飼料摂取量は対照区(1764 g/日・15 羽)に比べて試験区(1681 g/日・15 羽)は有意(P < 0.01)に少なかった。産卵率および産卵個数に区間の有意差は認められなかったが、試験区で少なくなる傾向にあった。飼料効率も両区で同等の値(約 51%)を示し、差は認められなかった。飼料価格(/20 kg)は市販飼料が ¥2,750- に対して、試験飼料では ¥1,751- と低価格となった。本成績は、米の積極的利用によって生じる卵黄色の退色予防に陳皮の活用が有効であり、生産性にも支障を来さないことを示した。
キーワード: 屑米、陳皮、採卵成績、卵黄色
論文内に記されたβ-クリプトキサンチンの濃度に誤りがありました.論文は既に公開されているため,本文の修正はいたしません.正誤は下記リンク先の PDF をご覧ください.なお,数値の誤りは論文趣旨へ影響をおよぼすものではないこと,添えて申し上げます.(掲載:2023/12/07)
In vitro における褐藻添加がメタン生成およびルーメン性状に与える影響
眞田歩佳1・山中麻帆1・中川敏法2・林英明3・平山琢二1
1 石川県立大学 生物資源環境学部、石川県野々市市 〒921-8836
2 滋賀県立大学 環境科学部、滋賀県彦根市 〒522-8533
3 酪農学園大学 獣医学群、北海道江別市 〒069-8501
要約
市販褐藻飼料がルーメン内ガス生成量および発酵性状に及ぼす影響について、in vitro 法で検討した。人工ルーメン液に基礎飼料のみを供試した対照区、これに市販褐藻飼料を添加した褐藻区を設け、各区の pH、生成ガス濃度、プロトゾア数および揮発性脂肪酸(VFA)濃度の経時的変化について検討した。メタンおよび水素濃度は、培養 12 時間後で褐藻区が対照区に比べ有意に低かった。培養 36 時間後の培養液の pH、プロトゾア数および VFA 濃度は、有意な区間差はみられなかった。これらのことから、市販褐藻飼料のウシへの給与は、ルーメン内における微生物発酵を維持させながら、メタン生成を抑制できる可能性が示唆された。
キーワード: Ascophyllum nodosum、in vitro、褐藻、メタン
北海道の一乳牛哺育センターにおける疾病と増体に関する実態調査
猫本健司・小玉明日香・佐藤博佳
酪農学園大学 農食環境学群、北海道江別市、〒069-8501
要約
本研究の目的は、外部委託の一つとして、北海道のある町で 2003 年に設立された乳牛哺育センター(以下、センター)を対象に、疾病や増体などを調査し、センターの普及に向けた課題などを整理することである。2019 年 10 月現在、同町酪農場の 3 割強である 34 戸がセンターを利用している。調査項目は各疾病の診療回数(呼吸器系疾患、消化器系疾患、運動器系疾患など 8 分類)と増体である。預託子牛の入舎時の平均日齢は 10.6±6.7 日で、30 日齢に換算した酪農場ごとの入舎時体重は 60.8±7.0 kgと大きなバラツキがみられたが、平均飼育日数は 293±4.4 日、退舎時体重の平均は 337±25 kgとなり、酪農場ごとの数値のバラツキは小さくなった。これは、哺乳ロボットを用いた管理により、センターでの日増体量の酪農場ごとの平均値(0.99±0.025 [kg/日])が比較的高いことから、たとえ入舎時の体重が低い個体であっても、その後順調に成長が回復したためであると考えられる。疾病別診療回数については、呼吸器系疾患(1.9 回/頭)が疾病全体の8割弱を占め、7 週齢に診療回数のピークが認められたことから、群飼養にともなう場内感染が示唆された。3 週齢目に診療回数のピークがあった消化器系疾患(0.1 回/頭)による死廃頭数(3,003 頭のうち 14 頭)は、呼吸器系疾患(同 22 頭)に次いで高く、対策の必要性が示唆された。一方、調査対象 3,00 3頭のうち、死亡・廃用となった個体は 57 頭であり、その死廃率は 1.9%であった。これは、北海道の家畜共済における乳用牛死廃事故割合{1~30日 齢で 4.8%(新生児疾患は含まない)、31 日齢以上で 3.0%}に比べて、著しく低い値である。したがって、出生したばかりの子牛をセンターに託して哺育料を負担し、群飼養による疾病感染などで多少のロスが生じていても、死廃率の低さから、それをかなり上回る経済的利益を、酪農生産者は乳代収入などで得られる可能性が高い。
キーワード: 乳牛哺育センター、日増体量、疾病、死廃率、酪農場
Change in chemical composition and fermentation characteristics of drift seaweed during ensiling
Maho Yamanaka1, Ayuka Sanada1, Hideaki Hayashi2, Toshinori Nakagawa3, Tadashi Tsukaguchi1, Takuji Hirayama1
1 Faculty of Bioresources and Environmental Sciences, Ishikawa Prefectural University, Nonoichi, Ishikawa, 921-8836
2 School of Veterinary Medicine, Rakuno Gakuen University, Ebetsu 069-8501
3 School of Environmental Science, University of Shiga Prefecture, Hikone, Shiga 522-8533
Abstract
This study considered the change in chemical composition and fermentation quality of drift seaweed during ensiling. The drift seaweeds were pre-dried for 2 h and subsequently packed into plastic bag for 0, 15, 30 or 60 days. The moisture, ether extract, neutral detergent fiber, and non-fibrous carbohydrate content of seaweed silage for each storage period did not differ significantly. We found positive correlations between organic acid concentrations (acetic, propionic, lactic acids, and total organic acid) and storage duration (P <0.001). The V-score of each ensiling period was 100 points. These results show that drift seaweed silage can keep 60 days good fermentation condition, and there is a possibility that it may be used as a feed resource.
Keywords: Chemical composition, drift seaweed, fermentation characteristics, silage
Journal of Animal Production Environment Science No22 (1) pp1–8. 2023
Download PDF
哺乳子豚のふん量
祐森誠司1・押田敏雄2
1 静岡県立農林環境専門職大学、静岡県磐田市、〒438-8577
2 麻布大学名誉教授、埼玉県さいたま市、〒331-0825
要約
これまで公表されることなく基礎的な値が知られてこなかった哺乳時のふん量を測定し、報告することを目的とした。静岡県富士宮市の養豚農場 S の協力の下、生後 8 日目と 9 日目の二元交雑種(YD)子豚 8 頭の 1 日当たりの全ふん量を 2 回測定した。ふんは、クリープフィーディング開始前で、母乳由来である。平均体重は 3.4 kgと健常な状態にあった子豚 8 頭の 1 日当たりのふん量は、全量で 20〜35g、平均 2.5〜4.4g/頭/日であった。また、その水分含量は約 70%であった。
キーワード: 哺乳子豚、ふん量
Chemical composition, in vitro dry matter digestibility, and triterpenoid contents in Reishi (Ganoderma lingzhi) mushroom beds
Toshinori Nakagawa1, Keitaro Yamane1, Renandini Danistha2, Naomichi Takemoto2, Kuniyoshi Shimizu2
1 School of Environmental Science, University of Shiga Prefecture, Hikone, Shiga 522-8533
2 Faculty of Agriculture, Kyushu University, Fukuoka 819-0395
Abstract
Abstract This study considered the chemical composition, in vitro dry matter digestibility (IVDMD), and triterpenoid content in Reishi (Ganoderma lingzhi) mushroom beds (RMB). Crude protein, cellulose, and hemicellulose contents of RMB were 5.10, 44.97, and 3.76%, respectively. The IVDMD of RMB was 44.2%, which was a similar level to that of roughage such as rice straw. In addition, with antioxidant and anti-inflammatory activities, triterpenoids (ganoderic acid A, C2, C6, H, ganoderenic acid C, and D) remained in RMB. These results indicate that RMB can provide some nutrition and medicinal properties, and there is a possibility that it may be used as a feed resource.
Keywords: Chemical composition, Reishi (Ganoderma lingzhi) mushroom bed, in vitro dry matter digestibility, Triterpenoids
Journal of Animal Production Environment Science No22 (1) pp17–24. 2023
Download PDF
養豚汚水浄化施設曝気槽における異常発泡と水質との関係
田中康男
一般財団法人畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所、福島県西白河郡 〒961-8061
要約
養豚汚水浄化施設では活性汚泥法の曝気槽で発泡が異常に激しくなり、槽の上部から曝気液が周囲に越流し汚染するトラブルの生ずることがある。発泡を止めるには消泡剤の散布が有効であるが、管理者不在時や夜間に発泡が激化するような場合は防止が困難である。このため、どのような条件で発泡が強まるのかを検討するため AI 手法の一種である機械学習法で水質との関係について分析を行った。この結果、電気伝導率と水温が発泡に強く影響することが示唆された。
キーワード: 養豚汚水、活性汚泥法、浄化施設、異常発泡、機械学習
Study of relationships between blood concentration in raw milk and milk quality and herd performance measures
Kenji Nekomoto1, Asuka Komiya1, Yui Sasajima1, Fuka Yasuda1, Takashi Sugawara2, Noriyuki Shinomiya2, Tomohisa Tamura2
1 College of Agriculture, Food and Environment Sciences, Rakuno Gakuen University,Bunkyodai, Ebetsu, Hokkaido, 069-8501
2 Tokachi-Foundation, Obihiro, Hokkaido, 069-8501
Abstract
Previous methods for detecting blood in milk, including visual inspection and high-speed centrifugation, can only determine the presence or absence of blood in milk. However, inspection using a simple measurement device developed by Tokachi Zaidan enables quantification of blood in raw milk even at concentrations below the visual detection limit (0.01%). In this study, we used this device to determine the frequency of blood in the ordinary milk of individual cows and, based on herd performance, we investigated the relationships between blood concentration in milk and physiological factors such as month-age and breeding performance as well as the quantity and quality of milk. In total, 197 milk samples from individual cows were provided by two dairy farms (A and B) and analyzed in this study. Mean blood concentrations in milk (± standard deviation) were 0.0017±0.0009% (n = 57) for Farm A and 0.0026±0.0008% (n = 140) for Farm B. In both cases, the concentrations were substantially below the visual detection limit (0.01%). For both dairy farms (A and B), the blood concentration in milk tended to be higher for individuals with higher month-ages and calving numbers. On Farm B, the blood concentration in milk tended to be higher for individuals with a greater number of days after calving (i.e., individuals with lower breeding performance) and higher somatic cell counts in milk resulting from longer lactation periods. Nevertheless, in all cases, mean blood concentrations in ordinary milk were on the order of one-fifth the visual detection limit (0.01%) and were in a range that was not considered problematic.
Keywords: blood in milk, milk quality, herd performance, somatic cell, dairy farm
Journal of Animal Production Environment Science No21 (1) pp46–53. 2022
Download PDF
パウチ法を用いてリンゴ酸添加でサイレージ調製した特定外来生物ウスゲオオバナミズキンバイ (Ludwigia grandiflora subsp. hexapetala) の発酵品質
山中麻帆1・奥美沙紀2・稗田真也3・小林大輝4・平山琢二1・野間直彦5・中川敏法5
1 石川県立大学、生物資源環境学部、石川県野々市市 〒921-8836
2 岐阜大学大学院 自然科学技術研究科、岐阜県岐阜市 〒501-1193
3 豊橋市自然史博物館、愛知県豊橋市 〒441-3147
4 滋賀県立大学大学院 環境科学研究科、滋賀県彦根市 〒522-8533
5 滋賀県立大学 環境科学部、滋賀県彦根市 〒522-8533
要約
本研究では、特定外来生物として駆除されたウスゲオオバナミズキンバイの飼料利用を目的とし、パウチ法により調製したウスゲオオバナミズキンバイのリンゴ酸添加サイレージの発酵特性について検討した。対照区(0%区)およびリンゴ酸を新鮮物重比で 0.4%、1.0%添加した区(0.4%区、1.0%区)の計 3 区を設け、室温で 2 週間貯蔵した。フリーク評点は 0%区(51.7)および 0.4%区(56.7)と比べて 1.0%区(73.7)で有意に高かった(P<0.05)。このことから、リンゴ酸を添加してパウチ法によりサイレージ調製したウスゲオオバナミズキンバイは、比較的良好な発酵品質を示し、飼料利用の可能性が示唆された。
キーワード: ウスゲオオバナミズキンバイ、リンゴ酸、パウチ法、サイレージ
オルソ剤と飽和水酸化カルシウム水溶液の相乗効果による Cryptosporidium parvum オーシストの不活化
松原立真1・村越ふみ2・多田千佳・福田康弘・中井裕3
東北大学大学院農学研究科動物環境システム学分野、
宮城県大崎市鳴子温泉 複合生態フィールド教育研究センター 〒989-6711
1 現:ベルン大学、Hochschulstrasse Bern Switzerland 〒3000-3030
2 現:京都府立医科大学、京都府京都市上京区 〒602−8566
3 現:新潟食料農業大学、新潟県胎内市平根台 〒959-2702
要約
クリプトスポリジウム症は下痢を主徴とする人獣共通感染症で、家畜の生産性の低下や水系汚染による家畜およびヒトの集団感染を引き起こす。本原虫のオーシストは様々な消毒剤に対する抵抗性をもつため、効果的な消毒方法の開発が望まれている。本研究では、オルソ剤を消石灰液(飽和水酸化カルシウム水溶液)で希釈してオーシストに感作させたところ、純水の希釈よりも有意に高いオーシスト不活化能が得られた。また消石灰液で希釈したオルソ剤では、低薬剤濃度でも全オーシストの不活化が観察された。畜産現場で広く使用されている消石灰液を希釈に用いることは、オルソ剤のオーシスト不活化能を維持しつつ経済性を向上させる新たな技術になる。
キーワード: クリプトスポリジウム、水酸化カルシウム、消石灰液、オルソ剤
黒毛和種繁殖牛における飼養環境と血液生化学検査値、ボディ・コンディション・スコアおよび体重との関連性
渡邉貴之1・小西一之2
1 独立行政法人家畜改良センター鳥取牧場、鳥取県東伯郡琴浦町 〒689-2511
現:静岡県立農林環境専門職大学短期大学部、静岡県磐田市富丘678-1 〒438-8577
2 前:独立行政法人家畜改良センター鳥取牧場、鳥取県東伯郡琴浦町 〒689-2511
要約
舎飼いと放牧(冬期放牧を含む)における黒毛和種繁殖牛の血液生化学検査値、ボディ・コンディション・スコア(以下、BCS)および体重の関連性を調査するため、2 頭の黒毛和種繁殖牛について約3年半にわたり毎月採血し、血液生化学検査値、BCS(体表および骨盤腔 BCS)および体重を調査した。冬季(立ち枯れススキ草地)放牧期間は舎飼い期間に比べ、血中尿素窒素(以下、BUN)、β-ヒドロキシ酪酸(以下、BHB)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(以下、AST)、各 BCS および体重の低下やアルブミン(以下、Alb)、総コレステロール、遊離脂肪酸(以下、FFA)の上昇がみられた。また、立ち枯れススキ草地への放牧直後に乳酸(以下、LA)が一時的に高値になる傾向がみられた。各項目の標準範囲と比較した結果、舎飼い時期および混播牧草放牧地での放牧期間においては BUN の高値に伴い AST が高くなったが、立ち枯れススキ草地放牧期間は標準範囲内に収まる項目が多かった。このことから、立ち枯れススキ草地放牧期間においてはややエネルギー摂取不足であったものの、肝機能に悪影響を及ぼすほどのものではなく、この程度のエネルギー摂取不足は問題なかったと考えられた。血液生化学検査値、BCS および体重のうち、全調査期間を対象にして変動係数が比較的大きかった項目は、LA および FFA であった。供試した2個体において血液生化学検査値、BCS および体重相互の相関分析を行った結果、両牛ともに中程度以上の有意な相関関係がみられた項目は、以下の通りであった。BHB は Alb と負の相関がみられ、BUN、AST およびアセト酢酸と正の相関がみられた。FFA は AST およびルーメンフィルスコアと負の相関がみられた。体重は AST および各 BCS と正の相関がみられた。以上のことから、黒毛和種繁殖牛における血液生化学検査項目は飼養環境に伴い大きく変動するが、各血液生化学検査項目や体重、BCS は相互に連動していると考えられた。
キーワード: 黒毛和種繁殖牛、飼養環境の変化、血液生化学検査、ボディ・コンディション・スコア
Effect of fermented botanical product on weaning stress in piglets
Seizi Sukemori1, Takumi Suizu2, Hideto Torii2, Shinsuke Kishida2
1 Shizuoka Professional University of Agriculture, Iwata, Shizuoka, 438-8577
2 Manda Fermentation Co.Ltd., Onomichi, Hiroshima, 722-2102
Abstract
This study aimed to evaluate the effect of dietary supplementation with a fermented botanical product (FBP) on weaning stress in piglets. Effects were measured in terms of fecal consistency and cortisol levels in the coat as a marker of stress. Fecal consistency was observed daily in the afternoon and recorded on a 5-point scale and cortisol levels were determined at the following 3 times: on day 21, at the start of supplementation to assess change in the diet; on day 50, 1week after moving the piglets to the fattening pen, to assess adaptation to a new environment; and on day 81, the final day of experiment. No significant difference in fecal consistency scores were observed; however, an increase in wet and soft normal feces was noted in the experimental group, possibly due to the change in intestinal conditions induced by the FBP. The cortisol level in the coat of the experimental group continued to decrease during the period, while that of the control group leveled off. These findings suggest that the FBP contains useful fermented substances that directly and indirectly affect stress levels in piglets.
Keywords: ermented botanical product, intestinal health, cortisol level
Journal of Animal Production Environment Science No21 (1) pp14–20. 2022
Download PDF
遠心分離により血沈が生じた乳牛個体乳の血液濃度と牛群成績の関連性について
猫本健司1・安田楓花1・土屋怜1・菅原崇2・四宮紀之2・田村知久2
1 酪農学園大学 農食環境学群、北海道江別市 〒069-8501
2 とかち財団、北海道帯広市 〒351-0012
要約
酪農現場では乳房内出血が原因と推定されるピンク色を呈する生乳(以下、血乳と呼称する)が搾乳されることがある。血液混入の検査は目視(色沢)の他、乳業会社によってはバルク乳の遠心分離により血液沈殿(以下、血沈と呼称する)の有無を判定する精密検査を実施している。しかし、いずれの方法も血液混入の有無しか判断できず定量できないことから、筆者らは「とかち財団」が開発中の簡易型血液混入検査装置を用いて、現場で生じた血乳中の血液濃度を定量し、症状の推移や体細胞数などの牛群成績との関係を検討してきた。本研究では、個体乳を対象に遠心分離による血沈発生の有無と、血液混入量や牛群成績との関係について報告する。1酪農場(経産牛70~80頭)において、2年間に目視で確認された血乳は2個体であり、目視で確認できる限界濃度(0.01%)を上回る明らかな血乳が確認された。一方、同酪農場にて牛群検定の際に採取した個体乳(2020年9月の70個体乳と2021年9月の64個体乳)において、遠心分離により血沈が生じたのはそれぞれ6および5個体乳であり、血沈の発生割合は8.2%、血液濃度は 0.0004~0.0060%の範囲であった。血沈検出と非検出個体における血液濃度の平均はそれぞれ0.0022±0.0015, 0.0011±0.0008%となり、5%水準で有意な差が認められた。しかしながら、血沈が生じた個体乳11検体のうち2検体の血液濃度は非検出個体乳の平均値(0.0011%)よりも低く、さらに、血沈非検出個体乳123検体のうち7検体は、検出個体乳の平均値(0.0022%)を上回り、溶血などの原因により血沈が生じていない可能性が示唆された。したがって、遠心分離による血乳検査は目視よりも検出精度が高いものの、不確実な方法であることが示唆される。このことから、本研究で用いた簡易型血液混入検査装置で血液濃度を定量できる意義は極めて高いと考えられた。
キーワード: 血乳、血液濃度、血沈、体細胞数、酪農場
ワイン粕サイレージ由来乳酸菌含有飼料を与えた豚の排せつ物のたい肥化時に観察された臭気発生と発酵遅延
古屋元宏1・五味敬子2・乙黒美彩3・長田隆4
1 山梨県畜産酪農技術センター 山梨県中央市 〒409-3812
2 山梨県総合農業技術センター 山梨県甲斐市 〒400-0105
3 山梨大学ワイン科学研究センター 山梨県甲府市 〒400-0005
4 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 茨城県つくば市 〒305-0901
1 現:山梨県東部家畜保健衛生所 山梨県笛吹市 〒406-0034
要約
ワイン粕から分離した乳酸菌(LAB)含有飼料の給与が、豚排せつ物たい肥化時における発酵や臭気発生、温室効果ガス(GHG)インベントリに関与するアンモニア(NH3)排出係数に及ぼす影響を検討した。本研究では、2 通りの飼養形態を想定し、ふん尿混合(実験Ⅰ)とふん尿分離(実験Ⅱ)の条件で試験を行った。各試験において、飼料に LAB を 107 個/gFM 添加給与した試験区と無添加の対照区を設定し、両区の豚排せつ物を回収し、オガ屑で水分 60%としてたい肥化に供した。結果として、実験Ⅰは試験区の初期昇温が対照区に比べ緩慢だったものの、3 週から典型的な好気的発酵となり区間に差は見られなかった。一方、 実験Ⅱの試験区は原料ふん中の有機酸が生成され、臭気ガスとして揮発性脂肪酸(VFA)が持続的に発生し、遅れて18 週に発酵開始した。NH3 排出係数は、実験Ⅰで試験区が対照区よりやや低かったが、2015 年日本国 GHG インベントリ報告書(NIR)に示された排出係数より両区とも高かった。実験Ⅱは試験区が対照区より高かったが、NIR 基準と同程度であった。NH3 抑制には、ふん尿分離が重要であると再確認できたが、LAB 添加による臭気低減効果は確認できず、特にふんのみのたい肥化に利用した場合には有機酸生成にともなう pH 低下によって発酵遅延や VFA 発生を助長する結果となった。
キーワード: アンモニア、揮発性脂肪酸、豚排せつ物たい肥、乳酸菌、発酵遅延
Copyright (C) The Animal Production Environment Society Japan All Rights Reserved.